藤井システム炸裂!47手で投了。「藤井猛」対「井上慶太」居玉四間飛車を解説

2017年2月25日

【 本記事のターゲット 】

  1. 振り飛車、四間飛車戦法を学びたい
  2. 対穴熊を攻略したい
  3. 藤井システムを学びたい

今回は今から25年前程前、藤井猛先生が考案した四間飛車・居飛車穴熊対策戦法「藤井システム」のご紹介します。

今回ご紹介するのは1995年の対井上先生の順位戦B級2組の局面となります。こちら、何と47手という短手数で投了まで追い込んだという、藤井システムの破壊力が世に知れた対局となりました。

私自身良く指す戦型として三間飛車か四間飛車が多いので、対穴熊戦になりかけたときに「藤井システム」を使わせて頂いております。

もちろん、藤井先生のように上手くは行かず自滅する時も多々ありますが...汗

振り飛車等の方で藤井システムを知らない方、一度本記事でどのような物なのか、その破壊力の凄さなどを学んで実践に役立てて頂ければ幸いです。

47手で投了となった当時の対局状況(対局名・対局者)を紹介

対局名

第54期順位戦B級2組7回戦(1995年)

対局者(段位は当時のもの)

先手:藤井 猛 六段

後手:井上慶太 六段

47手で投了に追い込んだ「藤井システム」の内容を棋譜と共に解説

四間飛車 対 居飛車という戦型でスタート

まずは前回同様に盤上と一緒に解説を進めていきたいと思います。

下が藤井さん(先手)、上が井上さん(後手)になります。

まずは先手の藤井さんが▲7六歩と角道を開けて、△3四歩とお互い角筋がぶつかった所で振り飛車の基本形となる▲6六歩と角道とめます。

そして下段を動かす前に▲6八飛と持ってきます。※下段のコマを動かすと飛車が動けなくなりますから注意

そして通常の四間飛車であれば、美濃囲い or 穴熊に持っていく為に玉を右側に持っていくのですが...ここが藤井システムのポイントでもあります。

居玉のまま、▲3八銀▲4六歩と進めていきます。急戦に備えて藤井システムでは玉を守らず攻撃体勢を先に作る事を優先させます。

場合によっては玉を右に持っていく事もありますが...この時点では居玉のままでいる事が多いです。

当時対四間飛車の場合は、相手側は居飛車+穴熊といった戦型を取られる事が多く、勝率も居飛車穴熊の方が圧倒的に良かったそうです。

その対策として登場したのが藤井システム、相手が穴熊に囲おうとしている所の急所をついていきます。

今井上さん側が△3三角と上がって△2二玉と指した所です。

この後、△1二香と指して1一に玉が入れば穴熊の完成が近くなってしまいます。

なので穴熊囲いが完成する前、この2二に玉が入った体勢の時をピンポイントで狙っていきます。

藤井システム炸裂、角筋がドンピシャで王を狙い撃ち!

狙いは3四の歩と3三角の地点、7七角をダイレクトに相手の玉を狙うようにしむけていきます。

2二に玉が入ったらすかさず▲3五歩、△同歩、▲2五桂と跳ねます。これが藤井システムです。

居玉のまま、すかさず自身の角の効きをダイレクトに相手玉に効かす対穴熊戦の急戦戦法です。穴熊に囲まれる前に決着をつけてしまおうという狙いです。

桂馬跳ねるのちょっと早いんじゃない?角が逃げて2四歩とされると桂馬が死んでしまう...と思うかもしれません。

けどよく見てみて下さい。この角がもし△4二角という形で逃げたとしたらどうなるか...

こうなりますよね。この▲5五角があまりにも厳しい一手!

3五に歩があるので手駒の歩を合間に使えないですし、もし△3三桂と跳ねて防いだとしても下記図の通り▲2四歩が厳しすぎる...

こうなってしまったら投了ですね...もし桂馬を跳ねずに△4四歩と突いても...

▲同銀、その後▲4三銀成で勝勢に。角が良く効いてます。

なので▲2五桂と跳ねた時、△4二角等で角を逃げることが出来なくなってしまったんです。

角は逃げれない、苦渋の決断で銀角交換を狙うが...

そこで井上さんが指した手は△4四角。

あえて銀に角をぶつけるというちょっと強引な手に打って出ます。

その後桂馬を何とか払おうと▲6五歩、△2四歩、▲6四歩と進み...

▲4四銀、△2五歩と桂馬を取る事に成功します。ただ未だに7七の角が対角線状に良く効いており...▲5五角と歩を取ってさらに井上玉に焦点を当てます。

次に▲4四角と進まれると、同様に3五の地点に歩があるので合間に歩を利用出来ず...

もし銀で合間したとしても、角を切った跡に同玉であれば▲6六角で王手飛車、同桂なら3四歩打で攻めが続いてしまいます。

一気に終盤へ、47手で投了に追い込まれる。藤井システム恐るべし

4四の歩が取られると終盤に入ってしまうので何とか4四歩の地点を守ろうと△3二桂打としますが、さらに▲3三歩打と攻めを繋げられます。

この▲3三歩打ですが△同桂と取ると▲6三歩成、△同銀、▲3四歩打と下記のように攻めが続いてしまうので...

実践では△同玉と井上さんが指したのですが...ここで藤井さんが指した手もものすごい。

▲4五角打!

これは角が効いているので同歩とは取れないのはもちろん、1二香も狙いつつ一番の狙いは6三歩の地点。▲6三歩成、△同銀、▲同角成、△同金、▲同飛車成となってしまうと完全終了です。

なので井上さんは△5四歩打として、6三の地点を守りつつ5五の角を払ってしまおうという狙いだったのですが...

▲6六角と引かれてこれがまた飛車に当たっている状態...飛車が取られると4五の角がとれるので、1二香を守る+玉の位置を安全な所にという事で△2二玉と元の位置に玉が戻りますが...

▲8四角、△4五歩、▲6三歩成と進んで井上先生投了。ここまで何と47手。

プロの対局で50手を切る対局というのはそうそう無いんじゃないでしょうか...

この後ですが、もし同銀だと▲6一飛車打が厳しく...

同金であれば▲同飛車成、△同銀、▲5三飛車打などもかなり厳しいです。場合によっては遊んでいる8四角を6六角まで引いて再度玉を狙う事も視野に入れれるかと。

一方藤井先生側は居玉のまま戦ったのにも関わらずほぼ無傷...状況を見て勝ちはないという事で井上先生投了。

当時この藤井システムの破壊力は凄まじいものがありました。

この対局で藤井システムという名前が名付けられ、一気に有名に。mogはちょうどこの数年後に高校の将棋部に入るのですが、結構真似て四間飛車をやる人が多かったように思います。

そしてその後藤井先生は竜王戦で竜王位を奪取し3連覇するという偉業を成し遂げました。

ただその後藤井システムの対策がかなり進み、あまりプロの間では見られなくなりましたが、最近たまに藤井先生が指しているのを見かける事があります。

最近では第53期王位戦挑戦者決定戦の渡辺さん vs 藤井さんにて藤井システムが指されたのを見た事があります。

 最後に

破壊力抜群の藤井システム。私もよく三間飛車 or 四間飛車の状態で相手側が穴熊を目指そうとした所をすかさず狙って藤井システムを指す事が良く有ります。

上手くいけば一気に勝勢になります。ただ急戦戦法なので上手く行かない事も多く、中盤の駆け引きがものすごく重要です。

初心者の方には難しいかと思いますが、2級〜1級くらいの方であれば指す事も出来るかと思いますので、相手側が穴熊、自身が振り飛車の場合は一度チャレンジしてみて相手をギャフンと言わせてみて下さい。