【 本記事のターゲット 】
- NHK将棋トーナメントで生放送をした対局を見てみたい
- 森内永世名人 vs 藤井四段の対局内容を知りたい
こんにちは、将棋TIPSです。
今回ご紹介するのは「第67回NHK杯テレビ将棋トーナメント2回戦第5局」になります。
そう、今年将棋ブームを引き起こした藤井聡太四段のNHK杯戦出場対局(生放送)となります。
こちらの対局は生放送で全国に放送されたので、リアルタイムで見た人も多いのでは?
永世名人の資格を持つ森内九段に若き藤井聡太プロが挑む試合、どんな感じだったのか実際の棋譜を交えてご紹介します。
目次
史上2回目、NHK杯テレビ将棋トーナメントで生放送が実現
出典:NHK
こちらの対局なのですが、通常のNHK杯テレビ将棋トーナメントとは少々違った取り組みとなりました。
それは何かというと...史上2回目の生放送で午前10時〜午後0時までの2時間枠を使った放送となりました。
通常NHK将棋テレビ将棋トーナメントは毎週日曜日の午前10時30分から午後0時までの1時間30分枠となっており、こちらの対局内容は事前撮影されたものを流すという形になっています。
が、世間の関心の高さを反映して、2008年3月放送の決勝戦(当時佐藤康光二冠 対 鈴木大介八段)以来9年半ぶりとなる生放送で対局が行われることになりました。
さて、実際に対局自体はどうなったのでしょうか...永久名人 vs 四段、世間の関心も非常に高く注目の一局となりました。
対局時の詳細状況
対局名
第67回NHK杯テレビ将棋トーナメント2回戦第5局(生放送)
対局者
先手:森内俊之九段(46歳)※永世名人
後手:藤井聡太四段(15歳)
解説者
佐藤康光九段(将棋連盟会長&永世棋聖)、中村大地六段、藤田綾女流二段(司会)
ちなみに本体局ですが、生放送という事もあり仮に午後0時を超えてしまった(長期戦になった)場合、何とバックアップでサブチャンネルでの延長放送を行う体制が組まれていたそうです。
実際は午後0時までに終局したので、利用する事はありませんでした。
ちなみにmog自身は当日用事があったのでリアルタイムでは見れなかったのですが、録画しておいて後でちゃんと見ました。
が、いつもの癖で10時30分から録画を開始してしまい...前半の30分が見れなかったという失態を...汗
NHK将棋トーナメント生放送「森内」vs「藤井」の対局内容を棋譜付きで解説
戦型は相居飛車
先手が森内九段、後手が藤井四段になります。
下記キャプチャ&画像では下が森内九段、上が藤井四段になります。
お互い出だしは穏便に森内九段の方から角道をとめて、ぱっと見た目は相矢倉模様かな...という雰囲気だったのですが、ここで藤井四段が△6四歩と突きました。
これ、通常△7四歩と伸ばしているので、7三の地点に銀が上がって棒銀の形にもっていくか、7筋を攻めるか...という形になる事が多いのですが、ここで△6四歩と突くという事は急戦覚悟で6筋を攻めようと見て取る事が出来ます。
攻め合いは6筋へ、藤井四段の攻め駒が素晴らしい
実際この後森内九段の飛車先の歩を交換し、藤井四段は駒組を多少行って6筋に飛車を持って行きます。
ぱっと見た目、この時点ではそんなに差は出ていないかも...と思うかもしれませんが、この局面解説でも感想戦でも話されていましたが、藤井四段の攻め駒の配置が素晴らしいんですよね。
通常将棋は
- 飛角銀桂で攻める
- 金2枚と銀1枚で王を守る
という事が良いとされていますが、藤井四段側の駒を見てみると本当にその通りとなっており、攻め駒として飛角銀桂が全て働いています。
一方森内九段の方は飛車先の歩は交換出来ていても、銀もまだ前に出れておらず桂馬も使えていない...この時点で既に藤井四段のほうが若干優勢となっていたようです。
そして...△6五歩と戦いが始まります。こちら同歩と取ると△6五桂と角銀両取りになるのでこの歩がなかなか取りづらい...
しかし、森内九段の下した判断は「▲同歩」でした。歩を取らずにさらに自陣に攻め込まれるのを嫌ったのかと思います。
その後▲8四角、△7七桂成、▲7七金、△6一飛、▲6六歩打と進みます。
感想戦ではこの▲6六歩打は堅かったのか?良かったのか?というのも話されていました。
けど受けないと△6五銀と出られたり攻めが続きそうなので...中々難しい所ですね...
歩で相手の逃げ道を防ぐ(一回目)
王がまだ囲いの中に入っておらず、金が桂馬の斜め前にいて歩が打てる状態の時、2二・もしくは8八の地点に歩を打って王の逃げ道を無くすという手筋があります。
こちらmog自身もたまに利用します。手駒で歩に余裕があるとき、これを一発いれておくだけで相手の手数を稼いだり、終盤になって王の逃げ道がなくなる事で攻め合いで勝つ事が出来たりと結構良い面が多い手筋となります。
ここはお互い同金となりましたが、王の周りを見てみると明らかに森内九段の王の周りに金銀が少ない...
そして藤井四段が指した手は「△5七銀打」!
王の周りに金銀がいなくなった絶好のタイミングに王の目の前に手駒の銀を打ち込みました。これは嫌な銀ですね...
森内九段側は歩が打てない状況なので、意外とこの銀を取るというのが難しく...
放っておくと「△5六銀」や「△6六銀成」などが結構嫌な手に見てます。さて、この局面どうするんでしょうか...
歩で相手の逃げ道を防ぐ(2回目)
まず森内九段が指した手は▲7八金。金を再度戻しました。これだけで2手指しているので、先ほど打ち込んだ△8八歩の効果がありましたよね。
そして藤井四段は△3六歩打と銀を狙いに行きます。ここで森内九段は銀を引いて少し気味の悪い5七銀と交換します。
しかし...そこですかさず再度「8八歩打」!
森内九段としてはこれはもう相手にしてられない...というのが本音でしょうか。
同金ととれば王の周りがさらに薄くなりますし、逃げ場もなくなる...手数もかかりますし...
という事で、実際の対局でも歩を取る事なく、▲7二馬と入り、飛銀両取を狙いつつ、藤井四段の銀を移動させる事で「▲3四桂打」と金銀両取を仕掛ける事に成功しました。
が...銀をどかせたのは良いのですが、△5六銀はかなり嫌な位置です...相手の手駒に銀もありますし、下手したら詰んでしまいそうな局面...
この後、△5五角と藤井四段が指します。森内九段の飛車に当てつつ香車を取って馬を作ろうという作戦。これまた意外と受けにくい...飛車を寄ると攻め駒がなくなってしまうので...
という事で、▲2四飛車と出て桂馬と金を交換、藤井四段は1九の地点に馬を作りました。
これはどう見ても森内九段の王の周りがやばそうです...さらに藤井四段の手駒も沢山...
藤井四段優勢のまま終盤へ
▲3四歩打と銀を取りに行く森内九段、藤井四段も銀は逃げずに王の周りの形の良さを重視して△同銀と指します。
その後香車を3三の地点にうって飛車をどかし、△2九馬と桂馬を取りつつ森内九段の王に迫って行きます。
流石にこのまま△4七馬とされるとまずいので、先逃げという事で▲5九玉と寄りますが...
あまり変わらず...△4七馬と藤井四段が指します。ここは受けないと詰んでしまう(△5八銀打、▲6八玉、△5七馬で詰み)ので▲5八銀と受けますが...
藤井四段は馬は逃げずにそのまま△同馬、▲同玉、△5七銀打、▲6九玉と進みます。
そして...この手がしびれますよね。かなり前に2回目の歩打をした「△8八歩」、これがこの時点で遂に稼働します。
△8九歩成!
いやぁ〜、これは終わったんじゃないか?とテレビを見ていて思いましたが...実際投了してもおかしくない場面ですが、終局近くまで指して頂けました。
▲7九金、△8五桂打。
佐藤九段や中村六段も解説していましたが、藤井四段は詰め将棋の達人です。序盤も強いですが終盤も強い。この8五桂が一番早い詰めろなんじゃないかと関心していました。
ここで森内九段▲6一馬と飛車を取ります。が、これは形作りですね。
94手にて藤井四段の勝利!
△7七桂成らずを藤井四段が指して、森内九段投了となりました。
佐藤九段も解説していましたが、この桂馬成らずが非常に良い手となっており、この後▲5九玉か▲7八玉しかないのですが、▲5九玉は頭金の△5八金で詰み、▲7八玉も△6六金で詰みとなります。
この後感想戦が約30分程続いていましたが、その中で森内九段が「良いとこ全くないですね...」と言わせるくらいに藤井四段の指し回しが素晴らしかったです。
四段が永世名人を撃破するという快挙♪森内九段といえば、長年羽生さんとライバルとして戦ってきたトップ棋士となり、羽生さんだけでなく森内さんも撃破した藤井四段は本当に素晴らしいの一言ですね。
最後に
プロなりたての29連勝も凄かったですが、最近は勝ち進んで行ったせいかトップ棋士に当たる事も多く、対局自体も非常に見応えがあります。
まだまだ15歳、非常に若い中でこれだけの結果が残せるのは本当に凄い。今後の活躍に期待したい所ですね。