「6二銀」、藤井聡太驚愕の一手!竜王戦4組ランキング「藤井」対「中田」を解説

2019年3月30日

【 本記事のターゲット 】

  1. 藤井聡太プロの驚愕の一手△6二銀が放たれた対局の詳細を知りたい
  2. 竜王戦4組ランキング戦(2019年3月27日)藤井七段 vs 中田八段を詳しく知りたい

いやぁ、やりましたね。

年間勝率歴代3位の8割4分9厘(45勝8敗)という圧倒的な数字で2018年度を首位で終了した藤井聡太プロ。

そして2018年度最後の試合となった中田八段との竜王戦4組ランキング戦...またまたすごい手が放たれたんですよ。

圧倒的な敗勢の状態から「△6二銀」という手を指し、残り時間が少ない中中田八段を撹乱させて一気に玉を寄せ切って大逆転♪

歴史に残る妙手とも言われている本対局ですが、どんな手だったのか内容を知りたいという方も多いかと思います。

という事で、mogレベル(アマ二段)となりますが、どのような対局だったのか解説付きでご紹介してみます。

妙手6二銀!「藤井聡太」vs「中田宏樹」竜王戦4組ランキング戦を解説

先手は中田八段、後手が藤井七段、序盤は矢倉模様のゆっくりした展開に

では早速対局の内容をご紹介します。先手が中田八段、後手が藤井七段となります。

序盤は比較的ゆっくりした展開となり、下記の図の通り矢倉模様の展開となりました。

そのままがっつり囲って4筋 or 6筋から戦いが始まるのかな...と思っていたのですが、お互い各がにらみ合った状態から藤井七段が中田八段の角先へ歩を伸ばします。

ここで中田八段は▲6四角と角を交換します。

角交換後、藤井七段が馬を作るが、中田八段が中盤を有利に展開を進める

角交換後、藤井七段が中田八段の陣地の中に角を打ち込みます。

この手順で馬を作る事には成功しましたが、馬自体はそこまで働きをするわけでもなく、着実に中田八段が藤井七段の陣形を崩しにかかります。

そして...

上記局面▲2四飛と歩を取って王手をした局面、銀と玉が両取りになっているので藤井七段が強気の△2三金と出た形です。

中田八段の飛車切り&藤井玉の体制を崩しにかかる。評価値は1000以上の開き...

通常は飛車を引くと思うのですが...

今回歩で受けたわけではない&飛車を引くと展開スピードが遅いと判断したと思うのですが、ここで中田八段は思い切って▲同飛成と飛車を切って飛車金交換を実施します。

その後、▲7一角打と飛車&銀を狙いに行きます。

このあたりから徐々に評価値(AIによる優劣判断)の開きが大きくなり...どんどん藤井玉の周りが崩壊していきます。

藤井七段も歩をうまく使いながら中田八段の陣形を崩しにかかりますが、中田八段の玉の周りにはがっしりと金銀3枚で囲われて安全圏。

一方中田八段は角で飛車を取って龍を作り、藤井玉の周りを追い詰めて行きます。

上記の通り、中田八段側の陣地も両端から攻められていますが、藤井玉の周りは金が一枚少ない&歩が垂れている分かなり危険です。

確実な指し回し、評価値は2000以上も開き圧倒的に中田八段優勢

この時点で評価値は1500以上も中田八段側に振れており、さらに下記中田八段が藤井七段の龍と銀を桂馬のふんどしで両取りにしたタイミングでは評価値は2000以上も中田八段側に振れていました。

一般的に評価値がここまでの値になると、プロの世界では逆転は不可能と言われている値になります。

龍が逃げた後、中田八段は▲5四歩打と銀を取らず、確実に藤井玉を追い詰めて行きます。

藤井七段も中田玉にかなり迫っていますが、手駒が角・桂・香しかなく、もはや絶体絶命という局面。

藤井マジック炸裂!妙手6二銀!同龍後に評価値が一気に−9999...中田八段の玉に詰み有り

銀取りなので、通常この局面なら銀を逃げる為に△4四銀と指すか、そのまま放置して違う手を指すか...という感じなのですが...

ここで驚きの一手が放たれます。

△6二銀!

ん??なんだこれ?ただ銀じゃん。

なんだか羽生さんの▲5二銀打を思い出させるようなタダの銀捨て...

この瞬間評価値はなんと3500近く中田八段に振れていました。確実に勝勢です。が、中田八段の持ち時間がわずか3分しかなかったのです。そしてこのタダの銀...

中田八段が下した決断は▲同龍でした。が、次の瞬間とんでもない事が起こりました。

なんと...評価値が一気に−9999!そして藤井七段すかさず△6八龍!

これは...もしや詰んでいるのか?

いや、そうに違いない...評価値が9999に振れるという事は詰んでいるという事なんですよ...

参考:6八龍に同銀 or 同金だとバラして桂馬から詰み

さて、藤井七段が△6八龍と指した局面なのですが、同銀や同金ならどうなるか、簡単に手順をご紹介。

どちらも同じような展開になるのですが、同銀の場合で解説します。

▲同銀だと△8八金打、▲同金、△同と、▲同玉、△7六桂打と進みます。

ちょっと手順が長いのですが、▲7八玉と右側に逃げた場合、△7七香打、▲同玉、△9九角打、▲8六玉、△8五金打、▲9七玉、△8八角成までの詰みとなります。

逆に9八玉と左側に逃げた場合、▲9六香打から下記図の通り簡単な詰みとなります。

まぁいろんなパターンがありますが、同金・同銀の場合は全て詰みますね。

実は6二銀とした時に同龍と指してしまったせいで、龍の位置が7筋から6筋になり、その結果△7六桂打が生まれたという事にも繋がっているんですよ♪

という事で、実践では△6八龍を▲同玉と進んだのですが...

AIのような鮮やかな詰み、111手で藤井聡太七段の大逆転勝利!

みなさん忘れてはいけないのが、藤井聡太プロは全国で詰将棋が一番上手い、間違えない棋士なんです。

詰将棋解答選手権で4年連続1位を取得しているんですよ...アマ・プロが参加している中で4年間連続1位って本当に終盤間違えないんですね。

という事で、今回もぴったりAI・評価値の通り中田八段の玉を詰ましてしまいます。

同玉以下ですが、△6七香打、▲5七玉、△5六歩打...

▲5六玉、△4五金打...

この局面で中田八段投了、111手で藤井七段の勝利となりました。

投了図以下ですが、▲4七玉と逃げた場合は△3八角打、▲5七玉、△5六金打までの詰みですね。

▲5七玉と逃げた場合はちょっと手順が長いのですが(mogが気づいていないだけ?お許しを...苦笑)

△3九角打、▲4八歩打、△同角成、▲同銀、△5六歩打、▲4七玉、△3五桂打、▲3七玉、△2七馬までの詰みとなります。

藤井七段が角を打った時、中田八段側の合間をする手駒が歩をはじめ前に進むコマしかなかったので、△5六歩打と手駒ぴったりの詰みとなりました。

という事で、2018年度最後の対局を勝利で飾った藤井聡太七段。

6二銀の正体は...取ってはいけない毒林檎だったんです。決して好手...という訳ではないのですが、巧妙な引っ掛け・トリックという藤井七段の戦略勝ちという形になりました。

いろんな解説を見てみましたが、プロなら時間をかければこの銀は取らなかっただろうと説明されていました。6二銀と指された時の中田八段の持ち時間が3分しかなかったという状況も影響したみたいですね。

ちなみにmogなら間違いなく▲同龍と取ってますね(苦笑)。こんな詰み筋、アマ二段レベルが見えるわけありません...汗。

ということで、今回は藤井聡太七段が放った妙手「△6二銀」に関して、対局内容&解説を交えて詳しくご紹介しました。

歴代最高勝率とまではいかなかったですが、タイトル戦で見る日も近いかも知れませんね。(2024年追記:ついにタイトル八冠を達成しましたね。本当にすごい!)

今後の藤井聡太プロの活躍が楽しみです。