名人をこす、将棋プロ棋士「藤井聡太」が名人撃破。朝日杯オープン準々決勝解説

2018年1月16日

【 本記事のターゲット 】

  1. 藤井聡太四段と佐藤名人の対局内容を知りたい
  2. 朝日杯オープン準々決勝の内容・棋譜を知りたい

今回は藤井聡太四段と佐藤名人との対局「朝日杯オープン準々決勝」を解説してみたいと思います。

藤井四段が公式戦でタイトルホルダーと対戦する初めての対局、そして藤井四段が小学校の文集に書いた「名人をこす」という言葉を実現出来た瞬間でもあります。

小さい頃からの夢、継続して努力しつづければ叶うという事を藤井四段に教わったような気がしますね。

将棋の名人を撃破した時の対局詳細をご紹介

対局名

2018年1月14日(日) 第11期朝日杯オープン戦本戦 準々決勝

対局者(段位・タイトルは当時のもの)

先手:藤井聡太四段

後手:佐藤天彦名人

対局後、藤井四段のコメントによると「幸運にも勝利できたが実力的にはまだまだ」と、淡々と口にしたそうです。

「名人に勝てたのは自信になる。この経験を生かし、さらなる飛躍を目指したい」とも藤井四段がコメントしています。

そして、注目すべきなのが藤井四段が小学生時代に「名人をこす」と文集に書いていたという事。

出典:日本出版

この事を取材陣から質問されると「すごいことを書いた」とはにかみながら回答するも、「超えたことにはならない」と表情を引き締めたそうです。

あくまでも名人というタイトルを取得するまでは、夢は叶っていないという事でしょうか。

名人になるには順位戦を毎年昇級しても最低5年かかります(現在藤井四段はC級2組の為)。

順位戦でA級まで昇格して、さらにA級棋士10名総当たりの中で1位通過しないと名人への挑戦権を得る事が出来ません。

順位戦で昇級するには各クラス共にほぼ負け無しの状態を続けないと厳しいという過酷な世界。

藤井四段がこれらを突破して、いつか名人に挑戦する日が来るという事を期待して待ちたいと思います。

名人撃破、朝日杯オープン準々決勝を記譜付きで解説

という事で、ここからは藤井四段が初めてタイトルホルダー、それも名人を破った時の対局内容を棋譜付きでご紹介していきたいと思います。

mogレベル(二段程度)になりますので、解説内容が多少間違っていてもご容赦下さい。

序盤は横歩取りの展開に

先手が画面下の藤井四段、後手が画面上の佐藤名人になります。

戦型は急戦型とも呼ばれる横歩取りの展開となりました。

横歩取りは最近もっとも研究されている戦型の一つとなり、最近の公式戦でも流行なのかこちらを使うプロ棋士の方がかなり多いように見受けられます。

この後駒組みが進み、横歩取りにありがちですが、お互い飛車の位置を色々と動かして駆け引きが始まります。

藤井四段、先手側が桂馬を両端跳ねた状態で、佐藤名人が△4四銀と桂馬を跳ねる手を事前に防いだ所で、飛車の横効きが無くなった瞬間を狙って藤井四段が▲8四歩と歩先を伸ばします。

この位を取った手をきっかけに藤井四段が有利に駒組みを進めます。

後手の佐藤名人から仕掛けるのが難しい局面となっており、藤井四段の左側が手厚いという事と、▲4五歩と突く手が残っていて先手側から仕掛けやすい展開となります。

▲4五歩、△同桂、▲同桂、△同銀、▲1一角成と進めば一気に優勢になりますので...

この局面で、佐藤名人に手駒に「歩」があれば、△2四飛車と回って△2六歩打が痛打になるのですが...歩切れの状態なので動けない...

中盤、藤井四段が仕掛けるタイミングを伺っている

とはいえ、公式戦ではやはり慎重に...▲4五歩と突く前にお互い玉の位置を変えたり、玉の周りを固めたり、飛車を下段に引いてみたり...

そして、遂に藤井四段が▲4五歩と仕掛けました。

ここから一気に局面が動きます。佐藤名人が銀を引いた事をきっかけに、藤井四段の銀が厚みを増して前進してきます。

佐藤名人の飛車を今にも取ってしまいそうな勢いで...

このままだと飛車が取られてしまうので、△同歩、▲同金、△2四飛と進みますが、まるで狙ったかのように下段に引いた飛車が守りに大活躍、▲2九飛と藤井四段が指します。

この後佐藤名人が玉の早逃げを行い、すかさず▲3四歩打、△3四金、▲4三歩打、△5三角、▲3五歩打とどんどん藤井四段が攻めて行きます。

解説者からも藤井四段が有利とのコメントがちらほら...

さて、終盤はどうなってしまうんでしょうか。このまま藤井四段が攻めきるんでしょうか...

終盤もノーミス、藤井四段が名人に完勝♪

駒のさばき合いが続き、下記佐藤名人が△6五桂馬と跳ねた局面になります。

通常であれば5七の角が逃げるか、2四の飛車を取るかといった局面ですが...藤井四段が指した手は「▲5四歩」と桂馬を取りに行きました。

当然佐藤名人は△5七桂成と角を取ります。角と桂馬2枚の交換...うーん、素人目線だとそんな気がするし、2四の地点の飛車を取った方が絶対良いような気もするのですが...

解説では金が5七の地点に来る事で守りの厚みがさらに増して先手良しとの事。

この後▲6五金打と上部脱出を防ぐ手堅い攻めを見せる藤井四段、さらに飛車取りを放置して▲4三銀打、これは詰めろになりますので勝負を決めに行きます。

△6一銀と玉の逃げ場所を佐藤名人が作りますが、▲4二銀成、△2九角成、▲8一角打と進み、この121手目▲8一角打を見て佐藤名人の投了となりました。

いや、本当に最後まで藤井四段側にミスがありませんでしたね...

相手は名人&2016年度の最優秀棋士賞を受賞しているんですよ?ここまでの実力を中学生が兼ね備えているとは...本当に末恐ろしいですね...将来が楽しみです。

投了図以下を解説

投了図以下ですが、銀が上がったり、合いゴマをすると▲7五桂打で即詰みになりますので、△7二金と寄るしか無いのですが...

▲7二角成、△同玉、▲6四桂打で△6二玉と逃げた場合、▲7四桂打、△7一玉、▲8二桂成、△同玉、▲7四桂打、△7一玉、▲8二金までの詰み。

もし▲6四桂打の時に△7一玉と逃げても▲6三桂打、△8一玉、▲7三桂打、△9二玉、▲9三金打までの詰み。

さらに▲6四桂打の時に△8一玉と逃げても、▲7三桂打、△7一玉、▲6三桂打、△6二玉、▲5三金打までの詰み。

いや、将棋の格言に「三桂あって詰まぬことなし」と言いますが、まさに本譜がその通り。

終盤で角と桂馬2枚を交換した事により、手駒に桂馬が3枚ある状態で終盤に入り、最後どんな状況でも桂馬を使って詰んでしまうと行った状況になりましたね。

佐藤名人のコメント

こちらはニュースでもいろんな所で掲載されておりますが、佐藤名人から本対局の感想・コメントを述べられているので下記に紹介しておきます。

-敗因は

激戦模様からずっと難しい戦いが続いていた。途中からだんだん苦しくなった。逆転の目を探していたが、藤井さんに的確に指された。最後は押し切られた。

-藤井四段とは公式戦で初対局だった

これまで藤井さんの将棋は何局か解説させてもらった。見る機会も多かった。終盤の踏み込みが鋭く、序中盤がしっかりしていて的確。10代半ばの粗削りな部分が多いが、藤井さんはそのあたりもしっかりされている。

実際に戦ってみて、序盤、中盤は非常に落ち着いて戦われていた印象がある。本局の終盤戦は長くはなかったが、思っていた鋭い感じもあったし、じっくりとした戦い方、強さを持たれていると感じた。

-藤井四段は今後、佐藤名人にとってどのような存在になるか

将棋界に現れたスター。この年齢で非常に実力があり、同じ棋士としては指すのが楽しみな存在だと思っている。

実際に戦ってみて他の棋士にないような個性を感じた。今回は私の結果は出なかったが、これからもいい将棋を指していける相手になるのではないかと思う。

最後に

佐藤名人のコメントにもある通り、本当に将来が楽しみな棋士になってきましたね♪中学生棋士という事で、藤井四段が有名になる前から本ブログでも紹介はしていたのですが...

ここまで大きな話題等になるとは思っても見なかったです。これからの活躍に期待ですね♪