将棋プロ公式戦30連勝ならず。「藤井」対「佐々木」(竜王戦)対局内容を解説

2017年7月2日

【 本記事のターゲット 】

  1. 将棋プロ棋士の連勝記録を知りたい
  2. 藤井聡太プロの連勝記録を止めた対戦を知りたい

今回は藤井聡太プロの連勝記録を止めた竜王戦決勝トーナメント佐々木勇気プロ戦をご紹介したいと思います。

今や時の人、藤井聡太プロが将棋界で約30年間もの間破られることのなかった連勝記録をついに更新しました。

2017年6月26日の竜王戦決勝トーナメントvs増田康宏四段戦に見事勝利し、歴代最多連勝記録29を樹立しました。

詳しくは下記記事に記載しているので良ければご確認頂ければと思います。

そしてその勢いで30連勝まで伸ばすかと思われましたが、こちらも連日ニュース等で放送されていましたが、藤井聡太プロにとって今回連勝中における最大の山場を迎えました。

2017年7月2日、第30期竜王戦決勝トーナメントにて佐々木勇気五段との対戦...そう、この佐々木勇気五段は小学4年生で小学校名人戦を優勝、プロデビューは16歳1ヶ月と史上6番目の早さとなっています。

そして実は三段への昇段ですが、藤井聡太プロが13歳2ヶ月で最年少という記録になっておりますが、それまでは佐々木勇気プロが13歳8ヶ月という最年少記録を保有していた実力者です。

プロになってからも活躍は著しく、2016年7月に羽生善治三冠を、2017年4月に渡辺明竜王をそれぞれ破っており、既にトッププロ棋士に近い実力の持ち主とも言われています。

以前記事にも記載しましたが、藤井聡太プロはまだプロデビュー間もないという事からトッププロ棋士との対局は殆どない状況でした。

そんな中竜王戦5組優勝&若手実力者の佐々木勇気五段との対戦、実は過去藤井聡太プロがまだ三段だった頃一度佐々木勇気五段と対局しており、その際は佐々木勇気五段が勝利しています。

さて、今回の対局はどうだったのか...連勝は続くのか、止まってしまうのか...詳しく解説していきたいと思います。

30連勝をかけた将棋プロ公式対局の詳細をご紹介

対局名

第30期竜王戦決勝トーナメント

対局者(段位は当時のもの)

先手:佐々木勇気 五段(22歳)

後手:藤井聡太 四段(14歳)

22歳 vs 14歳と若手同士の対戦です。

佐々木勇気プロは藤井聡太プロが29連勝した際、現地に赴いて間近で対局を観戦、ものすごい目つきで見つめる姿を見て「佐々木勇気五段が連勝を止めるのではないか?」という話しもニュースやネット上でかなり出回っていました。

さて、実際にどうなったのでしょうか...

「藤井聡太」 vs 「佐々木勇気」対局内容を棋譜付きで解説

戦型は居飛車相掛かり

先手が佐々木勇気プロ、後手が藤井聡太プロになります。

下記キャプチャ&画像では下が佐々木プロ、上が藤井プロになります。

序盤はお互いの飛車先の歩を伸ばして相掛かり模様になりました。恐らく居飛車になるかなとは予想していましたが、そのような展開になりました。

佐々木勇気プロの▲6八玉がコンピューター&AI将棋っぽく見えてしまうのはmogだけでしょうか...

最近電王戦などで良く棋譜を見ていたせいか、最近ちょっと変わった手を見るとコンピューターかなと思ってしまう自分がします...苦笑

そして局面は思わぬ所で一気に進んで行く事に...

お互い角道を空けた後、再度飛車先に△8六歩打と打って歩を交換しにいきます。

これは見て分かる通り、角道の歩が空いていて飛車の効きが止まっているので7六の歩を狙った手となっています。

しかし、佐々木プロも同様の手筋でお互い横歩取り戦型模様に...そして飛車が居なくなった部分を狙って佐々木プロが▲8二歩打!

今思うとこれが結構終盤まで響く形になったのかなと...

桂馬をタダで取られる訳には行かないので△9三桂と指します。

形勢は6:4で佐々木勇気プロが有利か?

ここからはAmeba TVでiPadで観戦していたので、ポイント部分を画面付きでご紹介していきます。

mog自身、まだ互角かなと思っていた局面なのですが、先ほど跳ねた桂馬を狙われている局面で、藤井プロは反撃の手筋として△9七歩と垂らした場面です。

出典:AbemaTV

こちらの局面で色々プロ棋士が解説していたのですが、殆どのプロ棋士が持ちたいのはどちらか?という質問に「先手を持ちたい」という回答が多く...

先手が少しいいのでは?という事で形勢判断ボードでも佐々木勇気プロの方に6、藤井プロの方は4という形で表示されていました。

一旦形勢を持ち直す?

こちら、Yahooのトップニュースでも出ていたのですが、藤井聡太プロが形勢を若干持ち直したと一報が入りました。

出典:AbemaTV

う〜ん、一応mog自身アマ二段の実力があるのですが、まだまだ全然分からない局面です...

中盤から一気に終盤へ

序盤かなりスローペースになった本局、しかしお互いの飛車角を交換した後は一気に局面が進みます。

お互い相手の陣地に飛車を打ち合い、同じ筋でにらみ合っている状況です。

出典:AbemaTV

この局面で佐々木プロが▲8三歩成を指し、飛車の効きが聞いているのでと金が取れない状況...これは流石に苦しい局面になってますね...

出典:AbemaTV

飛車は自陣にも聞いているので攻防にも役立っている状況です。

藤井プロ側も▲7九馬と銀を取って馬を切りたい所なのですが、その瞬間に飛車を抜かれてしまうのでかなりの考えどころです...

形勢は8:2で佐々木勇気プロが優勢

この状態での形勢判断ボードですが...

出典:AbemaTV

何と8:2で佐々木プロが優勢に。ぱっと見ただけではまだまだ互角に見えるのですが...やはりと金が大きいですね。

この後、藤井プロが飛車が取られるのを覚悟で△7九馬と指します。飛車を抜かれますが、ここで△5七香不成!

出典:AbemaTV

これは解説者も驚いていました。ここで不成を指す意味が何かあるのか...佐々木プロもこの場面で若干長考して考えていました。

そして佐々木プロが指した手は▲4八玉。取らずに逃げたという形になります。

出典:AbemaTV

詰め将棋のように早い手...

この香車の不成から藤井聡太プロと佐々木勇気プロの手が早い事...お互い5秒くらいの感覚で次の手をバンバン指して行きます。

△5六桂打、▲3九玉、△4八銀打、▲同金、△同桂成、▲同玉、△5八金打、▲3九玉、△7八馬、▲2七銀...

出典:AbemaTV

見ていてもしかして詰みなのか?と思うくらい...

けど佐々木プロもノータイムで指していたので、流石にこの局面で逆転ホームランは無いんじゃないか...と思っていたのですが、それでもあまりにも手が早いのでちょっとmogレベルでは付いて行けない状況...

出典:AbemaTV

この後△2六歩打、▲7二と、△4九金、▲同玉...

出典:AbemaTV

△6七馬、▲5八歩打、△6六馬...

出典:AbemaTV

▲6一と、そして△2七歩成を見た瞬間に、流石にこれは形作りに入ったなとmogでも分かりました...

出典:AbemaTV

最後まで礼儀正しい藤井聡太プロ

この後、▲9二龍、△4一玉、▲5二金打と進んで行きます。

出典:AbemaTV

この手を指した後、AmebaTVで対局室が表示されたのですが、藤井聡太プロがちゃんと脱いでいた上着を着るというシーンがありました。

出典:AbemaTV

上着を来た後、身の回りの物も若干片付ける仕草など...

見ていて投了する前の礼儀という物を見せてもらった気がしました。14歳なのに凄いですよね。

101手にて佐々木勇気プロの勝利、藤井聡太プロ敗れる

そして佐々木プロが▲3二飛打とした場面で少し時間が経過した後...

出典:AbemaTV

藤井聡太プロが「負けました」と。101手にて佐々木勇気プロの勝利となりました。

出典:AbemaTV

投了後、最近ではお決まりの光景となりましたが、ものすごい報道の方々が一斉に対局室へ入ってきて、熱戦を繰り広げて頂いたお二人にインタビューしていました。

出典:AbemaTV

佐々木プロの「我々の年代の意地を見せたかった、壁になれたのはよかった」といったコメントが印象的でしたね。

藤井聡太プロはまだまだ14歳、先輩プロ棋士に負けるという事を経験させたかったという隠れた優しさも見れた対局となりました。

連勝記録一覧

さて、再度連勝記録を振り返って行きましょう。

最終的には藤井聡太プロは29連勝で歴代単独一位となっています。

下記、29連勝を達成した時の対戦相手の表となります。スマートフォン等で表が切れている場合は画面を横向きにしてみて下さい。

番号日程棋戦名対戦相手勝敗
12016年12月24日竜王戦6組ランキング戦加藤一二三九段
22017年1月26日棋王戦予選豊川孝弘七段
32017年2月9日竜王戦6組ランキング戦浦野真彦八段
42017年2月23日NHK杯予選浦野真彦八段
52017年2月23日NHK杯予選北浜健介八段
62017年2月23日NHK杯予選竹内雄吾四段
72017年3月1日王将戦予選有森浩三七段
82017年3月10日新人王戦大橋貴洸四段
92017年3月16日竜王戦6組ランキング戦所司和晴七段
102017年3月23日棋王戦予選大橋貴洸四段
112017年4月4日王将戦予選小林裕士七段
122017年4月13日竜王戦6組ランキング戦星野良生四段
132017年4月17日NHK杯1回戦千葉翔太六段
142017年4月26日棋王戦予選平藤真吾七段
152017年5月1日竜王戦6組ランキング戦金井恒太六段
162017年5月3日新人王戦横山大樹アマ
172017年5月12日王将戦予選西川和宏六段
182017年5月18日加古川清流戦竹内雄悟四段
192017年5月25日竜王戦6組ランキング戦決勝近藤誠也五段
202017年6月2日棋王戦予選澤田真吾六段
212017年6月7日上州YAMADAチャレンジ杯都成竜馬四段
222017年6月7日上州YAMADAチャレンジ杯阪口悟五段
232017年6月7日上州YAMADAチャレンジ杯宮本広志五段
242017年6月10日叡王戦段位別予選梶浦宏孝四段
252017年6月10日叡王戦段位別予選都成竜馬四段
262017年6月15日順位戦C級2組瀬川晶司五段
272017年6月17日朝日杯将棋オープン藤岡隼太アマ
282017年6月21日王将戦一次予選澤田真吾六段
292017年6月26日竜王戦決勝トーナメント増田康宏四段
302017年7月2日竜王戦決勝トーナメント佐々木勇気五段

いやぁ、白星ばっかりでしたが遂に黒星が付きましたね。それでも29勝1敗ってプロ棋士の中ではあり得ない数字になっています。

最後に

藤井聡太プロはまだプロデビューして順位戦や竜王戦などが下のクラスになっているので当分トッププロとの対戦はそんなに無いはずです。

しかし実力が伴っていれば自然と上位に食い込んでくると思っていますので、AmebaTV炎の七番勝負のようなトッププロ棋士との対局が見れる日を期待して、その時を待ちたい思います。