【 本記事のターゲット 】
- 人間(将棋プロ棋士) vs コンピュータ 電王戦としての最後の対局を見届けたい
- どのような対局だったのか知りたい
以前下記記事にて、過去の電王戦の対局結果や人工知能の進化について記載させて頂きました。
そして電王戦としては最後となる佐藤天彦名人 対 PONANZA が2局(2017/4/1と2017/5/20)実施される事になっており、今回は第1局目を棋譜キャプチャ付きで解説します。
今回コンピュータ(PONANZA)に挑むのは20代で名人位に着いた佐藤天彦名人。
ちなみに2017年3月31日に選考会が実施され、佐藤名人は第44回将棋大将で本年度最優秀棋士賞に選ばれています。
この最優秀棋士賞というのは、言ってしまえば現在将棋プロ棋士の中で一番強い人。佐藤名人は2016年度の勝率が約7割(32勝-14敗)となっており、将棋の内容も見ていて非常に安定しています。
そして名人というビックタイトルも取得した事から最優秀棋士賞に選定されたのかと。
ちなみに2014年度と2015年度は皆さんご存知の羽生さんです。2016年度は本当に佐藤(天)さんが光った1年でしたね。
さて、将棋界で最強と言われている名人とコンピュータ・AI(将棋ソフト)、どっちが強いのか実際の対局を元に見ていきましょう。
目次
「将棋プロ棋士」対「コンピュータ・AI(将棋ソフト)」対局時の状況
対局名
第2期電王戦二番勝負第1局(2017年4月1日)
対局者(タイトル名は当時のもの)
先手:PONANZA
後手:佐藤天彦叡王(名人)
持ち時間:各5時間
解説者
野月浩貴八段、竹部さゆり女流三段
第2期電王戦二番勝負第1局の内容を棋譜付きで詳しく解説
先手がPONANZAで画面下、後手が佐藤名人で画面上になります。
解説内容はもちろんmogレベルになりますので、多少間違っていたり変な事言っていてもご容赦下さい。
奇手!初手▲3八金。プロ棋士ではまずささない手をAIはさしてくる
何と!?こんな手見た事ないです...PONANZAの初手▲3八金...なんだこれは...
将棋と言えば、普通角筋を開けるか、飛車先の歩を突くかなんですが...他には中飛車などで5六歩などはあるのですが、3八金は初めて見ました。
これ、どういう展開にするつもりなんだろうか...
その後△8四歩、▲7八金、△3二金、▲2六歩、△8五歩、▲2五歩、△7二銀と進みます。そしてその後「▲5八玉」。
なるほど、はじめから「中住まい」の囲いにする為の「▲3八金」だったんですね。
こうみると、確かに不自然ではないような...いや、不自然か...見慣れていないからでしょうね。確かに悪手という訳ではないですね。
その後互いに飛車先の歩を交換して局面は進んで行きます。
角交換、佐藤名人が早速仕掛ける
ここでようやく互いの角筋が開き、角交換になりました。まだまだ形勢は互角です。
しかし、ここで佐藤さんが仕掛けます。歩を突き捨てて、9筋から突破口を見出そうとPONANZAの香車を上がらせようという作戦です。
そして、PONANZAの香車が上がった隙間に角を放り込みました!強手!
金が寄れば角が死んでしまう形になっていますが、寄った際は△8七角成として角を捨てて8筋を突破しようという作戦になります。下記、参考図です。
PONANZA・AIは間違わない、正確な受けを連発
実際はどうなったかというと、PONANZAが指した手は▲2九飛になります。上手く飛車の効きを桂馬に紐づけたという形。
ちょっとここはmog的には良く分からないのですが、それでも△8七角成とすればどうなっていたんでしょうかね...
別に悪くないように見えるのですが...下記、参考図です。
▲同金、△同飛車成の後、△9八龍と入れば合いごまが角しかないので、玉が引けば桂馬を取れますし角で合いごまをすると△7七歩打ちからの△8七金打がかなり厳しいように見えるのですが...どうなんでしょう。mogが見えてないだけですかね?
実際は下記図のように△8八歩打と佐藤名人が打ちました。
いやぁ...コレは重たい...
個人的にはこの当たりの手筋がまずかったような気がするのですが...この後ですが▲7四歩、△同銀、▲7七桂、△8九角成と進みます。
いや、完全に団子状態ですよコレ。飛車先が歩と馬で埋まってて効きが悪いですし、馬もほとんど働けていない...これはかなりまずい状況です。
既にPONANZA優勢のように見える局面です。
コンピューター・AI(将棋ソフト)が優勢のまま終盤へ
この後ですが、▲6六角打から銀桂交換となり、PONANZAの角が5五の地点でかなり効きが良くなります。
当然飛車を逃げるのですが、さらに銀を打たれて飛車をいじめられます。そして、▲9一角成と香車を取られた上に馬を作られ、なんとか飛車先を軽くしようと馬を捨てて△8七馬と8筋突破を目指したのですが...
また△5五馬とど真ん中に馬を引かれ、この局面で佐藤名人の投了となってしまいました...
投了図以下ですが、攻めゴマがすくないので恐らく△9七馬と香車を補充しようとするかと思うのですが、その場合は▲8四歩打、△9三飛、▲8五銀と引かれて飛車と馬両方の働きを完全に止められてしまいます。
またこのまま放っておくと▲9四香打という形で飛車も死んでしまいます...
今回の対局は佐藤さんが積極的に仕掛けた感じを受けたのですが、それをPONANZAが正確に受け流し、最後には反撃を全て封じ込めたといった印象を受けました。
これを見ると、やはりコンピュータはミスをしない...引っ掛けようとしても引っかからないんですよね。
なので仕掛けが上手く行かない...やはり人工知能(AI)は人間の遥か先に行ってしまったんだろうかと改めて思った対局内容でもありました。
ということで、今回は名人vsコンピュータ将棋の対局を棋譜付きでご紹介しました。
別記事にて2局目・5/20対局分もアップしておりますので、良ければこちらも参考に見てみて下さい。