【 本記事のターゲット 】
- 将棋プロ棋士戦で実際にあった反則を知りたい
- 反則(禁じ手)に至った経緯・棋譜も知りたい
今回ご紹介するのは実際にプロ公式戦であった将棋禁じ手による反則負けを棋譜付きで紹介します。
なぜこの記事を書こうと思ったかというと...この前mog自身がある将棋ゲームで反則(自滅)をしてしまったからです...
恥ずかしながら王手がかかっている事に気付かなかった(汗)
恐らく将棋をやっている方は一度は反則の経験があるはず...(無い人もいるかも知れませんが...)。
実はあまり知られていないかもしれませんが、実際にプロの世界でも禁じ手・反則にて負けとなってしまった公式戦は数多く存在します。
そこで全てではないですが、将棋プロ公式戦で実際にあった禁じ手・反則があった対局を抜粋し、棋譜付き(反則に至るまでの解説付)でご紹介します。
目次
一番多い反則は「二歩」、プロ公式戦で実際にあった対局・反則負けを紹介
恐らくプロアマ問わず、一番多い反則が「二歩」になります。
私自身は二歩をした事はありませんが、相手が二歩をして反則負けになった事もありますし、実際テレビでNHK杯を見ていて2度「二歩」を見た事があります。※実際にはもっとあります...
そこで、私が実際にNHK杯で見た二歩を2局、直近の公式戦での二歩の1局、計3局を簡単ではありますが棋譜キャプチャ付きで紹介します。
豊川孝弘 vs 田村康介(2004年 NHK杯戦)
まずは1局目NHK杯戦からのご紹介です。
こちらはmog自身実際にリアルでは見てはいないのですが...以前テレビでプロ棋士反則負け特集にて紹介されていたので、実際に反則直前の棋譜と合わせながら解説します。
先手(キャプチャ下)が豊川先生、後手(キャプチャ上)が田村先生です。
今田村さんが△3七歩打とした場面となります。
角の逃げ場所が狭いので、▲同桂馬、△同桂成と進みます。※仮に角が4七の地点に逃げたとしても、▲5七桂成、△同金(左 or 直どちらでも)、▲4六歩打と攻めが続いてしまい陣形を崩されてしまいます。
そしてこの場面...もう角の行き場がありませんよね...出来れば龍の位置を玉の横のラインから外しておきたい...そんな思いもあったのかなと。
そう、ものすごく歩を打ちたくなる場所がありますよね...
▲2九歩打!
龍を下段に落として1九の位置に移動させれば玉からは離れて安全になるので、角は助からないけど手数と陣形は保てた...
次に5五の香車をとって6六に香車を打てば攻めが続く...中盤〜終盤の局面だったのですが...
よく見て下さい。2三の地点に何かいませんか?
そう、豊川さんの「歩」がいるではありませんか!
この時点で「二歩」、将棋規定ルールにより豊川さんの反則負けとなりました...いや、確かにこれは打ちたくなる場面...
行方尚史 vs 橋本崇載(2015年 NHK杯戦)
2局目もNHK杯戦からのご紹介です。
この対局は実際にTVで見てましたね...前日に橋本先生のTwitterにて「何やらトンデモない事が起きる!」とツイートされて将棋ファンの中でも何が起きるのか!?と注目された対局でした。※NHK杯は事前に収録されているので、橋本先生のみ二歩で負けたという事が分かっていたのでこのような状態に...
では実際に局面を見て行きましょう。画面下が行方先生、画面上が橋本先生です。
今橋本さんが△6七歩打と歩を垂らした局面です。
行方さんが左側の自陣上部を手厚く指し進め、上手い具合に角のラインで橋本さんの玉を睨もうとしており、この時点で既に優勢に進めている形になっています。
この後、行方さんが▲5八飛車と中央に厚みをまして、△4七角打、▲5九飛、△4五歩、▲6四金と進んだ局面です。
さらに上部が厚くなって橋本さんの陣地を脅かしています。
このあと、▲5三桂成がかなりきびしい...▲3三角成も飛車に当たるので何かのコマに当てながら少しでも攻撃を緩めれないかと手を考えていた局面かと...そこで指した手が...
△6三歩打!
桂馬が成れば金を取って反撃、▲5三金と入られたら△6五銀から攻め合いに持って行こうという作戦...
しかし、これもよく見て下さい。先ほど6七歩と歩を垂らしましたよね...
そう、既に橋本さんの歩がいるではありませんか。
この歩を打った瞬間、行方さんが「あ!」と、その後直に橋本さんも「あ!」と...そして頭を抱える...この瞬間「二歩」による橋本先生の反則負けとなってしまいました...
こちらはNHK杯の準決勝にて起こった出来事...恐らくTVで見ていた方も結構多かったのでは無いでしょうか。
郷田真隆 vs 佐藤天彦(2016年 JTプロ公式戦)
当時のタイトルホルダー(王将 vs 名人)同士の対局となります。結構最近の出来事になりますので、知っている方も多いかと...
画面下が郷田先生、画面上が佐藤(天)先生になります。
局面としては、佐藤さんが郷田さんの陣地を攻めきるかどうかという所...
手駒が少ないですが、既に8八の角は死んでいるので、いつ取るかどうか...郷田さん玉が上部に脱出するかどうか、かなり不安定&危険な状態となっている局面です。
ここで郷田さんが▲8四飛成と指して佐藤さんの角に龍の横効きを当てます。
角を取られる訳にはいかない&郷田玉への攻め筋を残しておきたいという事で、角を動かさずに紐を付ける形で△6二桂打と指しました。
この桂馬と角を剥がせれれば、ほぼ郷田さんの勝ちは確定しそうな局面です。佐藤さん側の手ゴマと攻めコマが少なく、また上部が広いので入玉も狙えそうです。
そこで、この桂馬を剥がしにいこうとしたのですが...
▲6三歩打!
もし同角であれば、▲8三飛打がかなり厳しい手になります。角が逃げれば▲2三金打から寄せに入りそうですし、△5二銀と守られても▲7三龍と中に入って行けば安全に勝てそうです。
しかし...これも良く見て下さい。6八の地点に郷田さんの「歩」ありますよね?
この時点で郷田先生は反則負けとなってしまいました...これも気付きにくい...
筋違いという反則も将棋プロ公式戦で発生している
次に筋違いでの反則をご紹介したいと思います。
ようするに、行けない場所に将棋のコマを動かしたという反則になります。こちらもプロ公式戦でいくつかあるのですが、一つピックアップしてご紹介します。
淡路仁茂 vs 石田和雄(1980年 棋聖戦)
まだmog自身生まれてないのでもちろん見てはいないのですが...
棋聖戦の公式戦での出来事となります。筋違いでの反則負けとしては結構有名です。
画面下が淡路先生、画面上が石田先生です。
局面は終盤となっており、淡路先生の角が相手玉によく効いています。ただ自陣も龍と金で攻められているので、ゆっくりはできない状況...
そこで、6六の角を▲1一角成として馬を作っておけば、次に▲1二銀打などで寄せに持って行けそうな雰囲気です。
そこで...▲1一角成!
ん?なんかおかしい...あれ?5七の角が1一に...
そう、本来であれば、6六角を▲1一角成とすべきところを、5七角を▲1一角成としてしまったのです...
当然角の動きとしてはNGとなりますので、この時点で淡路先生の反則負けとなりました。
筋違いの反則って普通ありえないと思っていたのですが...
この棋譜を初手から並べて終盤まで一通り検討してみましたが、終局間近で6六と5七の地点に角がいる状態であれば、確かにこのようなことが起こってもおかしくないかなと...
自滅という反則も。将棋プロ公式戦で起こった対局を紹介
最後に紹介するのは「自滅」での反則負けになります。
これは結構珍しいかなと思いますが、mog自身この前王手放置で負けになってしまったのでなんとも言えないです...汗。こちらも一つピックアップして紹介したいと思います。
植山悦行 vs 北村昌男(1991年 早指戦)
2003年3月まで「早指し将棋選手権」というプロ公式戦が存在していました。
40手目まで各10分(2001年以降は各5分)、41手目以降1手30秒未満というNHK杯に似たような早指しになります。※1972年8月に放送開始、2003年3月に棋戦及び放送が終了となっています。
こちらの早指戦で発生した自滅での反則負けをご紹介します。
画面下が植山先生、画面上が北村先生になります。
局面は終盤戦、どちらかというと北村さんが植山さんの玉を寄せにかかっている所...上部へも下部へも玉が逃げれない状態です。
攻めゴマの龍も動けない状況で手駒が「銀」と「歩」のみ、金で7四の角をとるか、盤上の駒を動かすか迷っていたんじゃないかなと思います。そこで指した手が...
▲6四歩!
ん?角が...角の効きが玉に...
そう...7四に角いますよね。植山さんの玉、睨んでますよね。玉とられちゃいますよね。
こちらも初手から棋譜を並べて見たのですが、途中数手前に▲6五歩と角道を止めているんですよね。
なのにそれを自分で動かしてしまった...自滅手となり、この時点で植山先生の反則負けとなりました。
局面をみても終盤で苦しかったんだと思います。相手玉近くの歩をついて金銀で攻めようと考えていたんじゃないなかと...
ということで、今回は二歩・筋違い・自滅の3種類をピックアップしてご紹介しました。
実はこの他にも「二手指し」や「時間切れ」などの反則負けもあります。
プロ棋士でもやってしまう反則負け...これを見るとちょっと安心しますよね。プロも人間、こういうこともあるんだなと。