【 本記事のターゲット 】
- 将棋の名局を知りたい・学びたい
- 羽生マジックを見てみたい
今回は「羽生マジック」と呼ばれる羽生さんの対局をご紹介します。
羽生マジック、将棋をする方であれば、誰もが聞いた事があるフレーズかと。羽生マジックで一番有名なシーンは下記「5二銀打」だとは思いますが...
5二銀以外に有名な羽生マジックとして、過去のNHK杯羽生vs中川戦にて終盤に放たれる絶妙手・頓死。
これには将棋ファンの全員はもちろん、解説者であるひふみん(加藤一二三九段)が雄叫びをあげたものになります。
その他にも羽生マジックとして有名な棋譜としては、下記郷田戦の終盤で放った「8六銀打」も有名です。
さて、今回はこれ以外の羽生マジックという事で、ひふみん(加藤一二三九段)が解説者として驚愕した事でも有名な第57回NHK杯戦の対中川戦をご紹介。
終盤の逆転劇・羽生マジックに関して、棋譜付きでわかりやすく解説します。
目次
羽生善治 vs 中川大輔戦、羽生マジック「頓死」が発生した対局詳細
対局名
第57回NHK杯戦2回戦第11局(2007年)
対局者(段位は当時のもの)
先手:羽生善治 王座・王将
後手:中川大輔 七段
解説者
加藤一二三九段、中倉宏美女流初段
羽生vs中川。羽生マジック「頓死」が生まれた第57回NHK杯戦2回戦第11局を棋譜付きで解説
今回NHK杯戦のご紹介となりますが、おそらく将棋ファンの方なら誰しも知っている羽生 vs 中川戦になります。
やはりNHK杯はテレビで放送されるということもあってみなさんの記憶に残りやすいですね。
という事で、どんな感じですごかったのか、棋譜付きで詳しくご紹介していきます。
※TIPS:YouTubeにて動画で全棋譜をご紹介しています。初手から確認したいという方は、下記動画も合わせてご覧下さい。
序盤の戦型は居飛車&角換わり
先手が盤上の下になる羽生善治 王座・王将、後手が盤上の上となる中川大輔 七段となります。
序盤はお互い飛車先の歩を突いていく居飛車同士の戦いとなりました。
途中玉を囲う前に中川さんの方から角交換に打って出て、羽生さんがそれに応じ角が成れるスペースを作って馬を作ることに成功しました。
途中千日手か?と思われたが、羽生さんが手を変えて続行
中盤にて羽生さんが中川さんの飛車をもぎ取ろうと金で追い打ちをかけます。しかしもちろん金で飛車をとられるわけにはいかないので、中川さんは飛車をとられないように対応します。
そうすると...
▲8三金、△6二飛、▲7三金、△9二飛、▲8三金、△6二飛、▲7三金、△9二飛となり...
お互い一歩も譲らず...お互い指しては逃げて指しては逃げての繰り返し...
このままだと「千日手」が成立してしまいます。
ちなみに千日手とは同じ局面を4回繰り返すと千日手というルールが成立し、最初から指し直しになります。そして手番は逆の状態で指し直しとなります。
今回の場合先手が羽生さん、後手が中川さんとなっております。基本は先手が有利と言われている将棋...
このまま千日手をして先手から後手に変更になってしまうと時には不利になることにも繋がってきます。(全てがそうとは言い切れませんが...)
そこで羽生さんが千日手をさけて、馬で飛車をとります。馬と飛車の交換なので、コマの性能だけ見ると中川さん側に有利に進んだとみてもいいかと思います。
事実、ここから羽生さんは劣勢にもっていかれます...
中川さんの反撃、羽生さん絶体絶命。解説者のひふみんも諦めモード
羽生さんは取った飛車をすかさず中川さんの陣地内に放り込みます。▲5一飛打。その後、それを防ごうと△4一銀打、▲6二金、△8四角打と進んでいきます。
このあたりまでは羽生さんペースかなと思いながら観戦していたのですが...この後から中川さんの猛烈な反撃が始まります。
再度飛車角交換となり、その後下記図まで進行します。
この後、△6六歩打、▲4一金、△8五角打、▲5一角打、△4三玉、▲8四角成、△6七歩成、▲同玉と進んでいきますが、ここで中川さん渾身の一手「△6四飛打」が入ります。
王手+馬取りです。さすがにこれはきつい...どういう風に対応するんだろう?馬を6六の地点にでも引くのかな...と観戦していましたが、実践では
▲6五銀打、△8四飛、▲7四歩打、△7五銀打、▲6六銀打、△7七歩成....
いやぁ...これはさすがに先手番、羽生さんの劣勢は一目瞭然....もはや投了してもいいくらいの状態に見えます。
右側の飛車は完全に抑えられているし、左側は猛攻を受けていて中川さん陣内は4一金のみしか攻め駒がいない状態...
その後中川さんの猛攻もり、羽生さん側の銀金は剥がされ、下記図のように飛車まで成り込んできます。
...どう考えてももうだめだろ...とmog自身も思いました。
解説していた加藤一二三 九段もまだ終局していないのにもかかわらず、「中川さんが勝ちです」とということを明言してしまっていました....
羽生マジック炸裂 9八角打!ひふみん驚愕・NHK杯戦史上に残る大逆転
そして、敗戦濃厚な状況で羽生さんが放った一手...
それが「9八角打!」
この角打ちの対応によって、この後大きく局面が変わってきます。
この局面では中川さんの龍が羽生さん陣地の下段までくれば詰みになります。なので龍をとられない+下段に移動できる場所ということで中川さんは△8八龍と指します。
しかしここで忘れてはいけないのが、羽生さんが打った角筋が中川さんの玉をにらめつけているということ...羽生さんは▲5四銀と指します。
当然角が効いているので銀は取れず、中川さんは△3三玉と寄ります。羽生さん側は右側の桂馬が逃げ道を塞いでいるので、飛車で2六桂を払います。
そのあと△同歩、▲3八玉、△9九龍とついに下段へ龍が入り込みます。中川さんのパチッとコマを置く力が相当入っているように聞こえます。
もう絶体絶命のように思われたのですが...なんと...この時点で中川玉は詰んでいたのです...
手順は▲2八銀打、△同金、▲3七銀成、△2三玉、▲2四歩打...
3七銀成を過ぎたあたりから、解説者のひふみんこと加藤一二三九段の様子が...
- 「あれ?あれれ??おかしいですよ...これは。」
- 「も、もしかして頓死!?頓死なんじゃないですかね??」
- 「いやまてよ、歩の計算が...」「これ、詰んでますよ」「ひゃー」
- 「NHK杯に残る大逆転なんじゃないかな」「いやー、ひゃーひゃー」
とプチパニック状態...
それもそのはず、解説の中で羽生さんの負けとご自身で話していたんですから...まさかこの状態から羽生さんが勝つとは思いもよらなかったんでしょう。
ただひふみんこと加藤先生だけではなく、将棋ファンのほとんどの方は今回羽生さんは負けだろうと思っていたはず...
この後ですが、△同玉、▲3六桂打、△2三玉、▲2四歩打と続き...164手という大熱戦だったのですが、最後羽生マジックよる素晴らしい寄せ筋の前に中川さんがここで投了。
以下手順ですが、あとはこちらを歩の数だけ繰り返すだけです。
△1二玉、▲2三銀打、△同金、▲同歩成、△同玉、▲2四歩打、△2三玉、▲2三金打までの詰みとなります。
いったいどこでこうなってしまったのか...最後の受けが悪かったのか色々mogなりに考察してみましたが、やはり詰んでいるんですよね...
例えば△2二同金のところを△2三玉としても▲2四歩打からぴったり詰んでいますし...
羽生さんが桂馬を飛車で取ったところで龍で角をさばいても▲2四銀打から同様の詰みです。
おそらくですが、▲9八角と打たれた局面では龍は逃げずに△同龍と角をとって戦うしかないのかなと。
それでもこの局面で飛車を羽生さんに渡してしまうと、▲8三飛車打などからかなり厳しい状況になるのが見えているので...このまま続けていてもどうかなという所です。
どう見ても劣勢にしか見えなかった局面からの大逆転(もしかして実際にはmog含め分かっていない人が大逆転と思っているだけなのか??)。
羽生 vs 加藤 NHK杯戦の5二銀打の時と同様に、やはり普通の人には見えていない部分が羽生さんには見えているんだなとつくづく関心しました。
ということで、今回ご紹介した対局、羽生マジックとしてはものすごく有名は一局になります。
中盤〜終盤にかけて放たれる絶妙手、見ている方も魅了するような凄さを羽生さんはもっているなと。
当ブログでは他の羽生マジックなどもご紹介していますので、良ければ見ていって下さい。