将棋永世七冠達成の瞬間。「羽生善治」対「渡辺明」第30期竜王戦第5局を解説

2017年12月5日

【 本記事のターゲット 】

  1. 永世七冠達成の瞬間を知りたい
  2. 第30期竜王戦第5局の内容を知りたい
  3. 羽生さんの永世七冠までの軌跡を知りたい

ついに...ついに達成しましたね。

もちろん史上初めての永世七冠達成、羽生先生本当におめでとうございます♪

本来はリアルタイムで見たかったのですが...もちろん平日なので仕事が...汗。

そして仕事中に隣から「永世七冠達成だって」って言われて記録達成の瞬間を他人の声で知ってしまうという...

とにかく前人未到の偉業達成、素晴らしい♪

という事で、永世七冠の達成の瞬間やこれまでの道のり、そして今回の第30期竜王戦第5局の対戦内容を棋譜付きで分かりやすく解説します。

【将棋】永世七冠達成の瞬間をご紹介

藤井聡太四段以来の報道陣の数

すみません...リアルタイムで見たかったのですが...AbemaTV等で恐らく見られた方も結構多かったのでは?

下記が対局終了後の写真、凄い報道陣の数ですよね♪

出典:竜王戦中継plus

恐らくこれだけ報道陣が集まるのは、以前ご紹介させて頂いた藤井聡太四段の29連勝達成の瞬間以来ではないでしょうか?

町中で永世七冠達成の号外が配られる

そしてそして...恐らく羽生さん自身としては七冠独占以来?の将棋号外ではないでしょうか。

出典:時事ドットコムニュース

これ欲しかった...残念ながらmogが通った通勤通路には配られていなかったです...苦笑。

永世七冠までの軌跡・道のり

そして永世七冠に至るまでの道のりを箇条書きで書き出してみました。

  • 1985年、当時史上3人目(現在は渡辺明・藤井聡太含めて5人)の中学生プロ棋士
  • 1989年、当時史上最年少で初タイトル竜王を獲得
  • 1995年、棋王連続5期により、永世棋王獲得
  • 1995年、棋聖連続5期により、永世棋聖獲得
  • 1996年、史上初の七冠独占達成
  • 1996年、王座連続5期により、名誉王座獲得
  • 1997年、王位連続5期により、永世王位獲得
  • 2007年、王将通算10期により、永世王将獲得
  • 2008年、名人通算5期により、永世名人獲得
  • 2017年、竜王通算7期により、永世竜王獲得

いやほんと、凄い、凄すぎます。通常タイトルをとるだけでも大変ですし、永世の称号を一つとるだけでどれだけ大変か...

現役棋士で永世の称号をもっているのは「谷川浩司(永世名人)」「森内俊之(永世名人)」「佐藤康光(永世棋聖)」「渡辺明(永世竜王・永世棋聖)」の4名だけ。

渡辺さんのみ2つ永世の称号をもっていますが、それ以外の方でも1つ永世の称号をもっているという形。

それを7つもとってしまうなんで...いや本当におめでとうございます。

以前渡辺さんとの竜王戦対局で、3連勝の後4連敗...という事があったので(それも第4局は打ち歩詰めがなかったら羽生さんが勝っていた)、それから年数がかなり経過しましたが、偉業達成には感慨深いものがありますね♪

永世七冠達成時の対局。第30期竜王戦第5局を棋譜付きで解説

という事で、永世七冠達成の直前の対局、第30期竜王戦第5局を解説してみたいと思います。

この対局も羽生さんの強さが出た素晴らしい1局となりましたね♪

序盤は角交換&腰掛け銀模様

先手が羽生さん、後手が渡辺さんになります。

角交換後、良く有る腰掛け銀模様となりました。ここまでは定跡の流れで進んでいたのですが、この後羽生さんがいきなり仕掛けます。

▲4五銀!

あんまり見た事がない形ですね。この後△5五銀と出られてどうなるんだろうと解説でも検討されていたそうですが、実戦でもそのように進んで行きます。

そこで▲2五桂馬といきなり跳ねます。何となくこのあたりはコンピューター将棋を思い出させるような手筋。

いきなり桂馬を跳ねると、当然桂頭が狙われますので攻めを継続させないといけません。

羽生さんが積極的に仕掛けて行く

この後の手順ですが、△4二銀、▲1五歩、△3七角打とすすみます。

mog目線ではこれ馬作られて後手有利なんじゃないか...と思ったんですが、もちろん指しているのは羽生さん、そんな事は百も承知ですよね。

▲2九飛、△4六角成、▲4九飛、△1五歩と進みます。

4五と1九の地点に飛車で紐をつけた状態。この局面で初日封じ手となりました。

封じ手は▲4六飛

そして二日目、封じ手は▲4六飛でした。当然△同銀ととりますが、羽生さんはノータイムで▲3四銀と指します。

これ、ぱっと見た目めちゃくちゃ怖いんですよね。▲4五の地点に角を打つと、8一の飛車と2三の地点が両取りに...渡辺さんどうするんだろうと棋譜を見ながら思っていたのですが...

△8六歩、▲同銀、△5七銀成と手を進めます。ん?と思いましたが、なるほど、5九の地点に飛車を打ち込む手順がありましたね。

間接的に玉が6八に上がれば金を助ける事が出来ますが、囲いから外れる形になるので羽生さんは▲8八玉と指します。

その後△5七飛成と金をとり、▲6八銀打、△4八龍、▲5七角打、△4九龍、▲1二歩打と進みます。

いやこれは厳しい...どうもこれは端が受かりそうにないですよね。桂馬も角も効いているし、歩が間に入っているとはいえ香車も...

この後△同香、▲1二歩打、△同香、▲1三歩打と香車をつり上げて行き、香車桂馬で清算し馬を作ります。渡辺さんも△2二金と受けますが...ここで逃げずに▲1五香車!

気がつけば羽生さん側のコマは守り&攻めに全てが働いている状況に。解説でもこの時点で羽生さん勝勢という声が上がっていました。

終盤は危なげなく寄せに持って行く

そして終盤に入って行きます。馬はとりますが、香成が効いているのと、直前に龍と2三の地点を睨んで打った攻防手△6七角が良く効いています。

この後端はもう受からないと判断して玉を早逃げしますが...銀と成香を上手く使って歩をたたいてさらに攻めを継続させます。

△9四桂打や△6九角打と渡辺さんも反撃に出ますが、羽生さん側の陣地がとても堅い...そして下記▲8四香打が強力!

これ香車をとれば詰みがあるんですよね。とはいえ、とらないと飛車の効きもなくなり勝ち目はない...

渡辺さんの選択は「△同飛」でした。これは形作りですね...

その後、▲4二と、△同玉、▲4三銀打...

この手を見て渡辺さん投了。羽生さん竜王位奪取&前人未到の永世七冠達成の瞬間となりました♪

投了図以下簡単に解説しておくと、△5二玉と逃げる以外は頭金で詰みになるので...

△5二玉には▲6三桂打がぴったり。△同金なら▲5二金打で詰み、△6一玉でも▲7一金打で詰みとなります。

ということで、今回は永世七冠達成の瞬間をご紹介しました。

最近は名人・王座・王位と立て続けに若手にタイトル奪取され、流石にそろそろ厳しいのかな...とも思ってしまいましたが、この竜王戦の対局を見る限りやはり圧倒的強さは健在。

今後もいち将棋ファンとして、若手と繰り広げられる数々の対局を楽しみに見させて頂きたいと思っています。